コペンハーゲンでポスト京都議定書の話し合いが行われているようだが、遠く日本から眺めていると、二酸化炭素排出の大幅な削減にコミットすることが国益に反するなら、無理して合意する必要はないのに、と思ってしまう。
Bjørn Lomborgなんかは“Cool it! The Skeptical Environmentalist’s Guide To Global warming”(邦訳『地球と一緒に頭も冷やせ!』)、地球温暖化を少しだけ遅らせるために莫大な費用を負担して経済成長を阻害するのは得策ではなく、各国が豊かになれば温暖化による被害(そもそも一般にイメージされているほど酷くない)に難なく対応できるようになるのだから、経済成長を優先しましょうと主張している。
国際的な課題に積極的に取り組む姿勢を見せて、交渉の場でイニシアティブを取ることが、外交的には国益になるんだみたいな話を聞くこともあるが、それってどれだけ重要なんだろう。もちろん、国際社会でリーダーシップを取ることにはいい側面があるのかもしれないが、実利がないのにそんなことをするのは本末転倒。
Lomborgが運営しているコペンハーゲン・コンセンサスが経済学者を集めて、そうしたグローバルな課題の優先順位を費用対効果の側面から検討した際には、地球温暖化対策の優先順位を最も低くランク付けしている。ちなみに最優先課題は栄養失調対策(子どもに対するビタミンAの投与)で、2番目はドーハ開発アジェンダ。
Lomborgらのこうした見解には、いろいろ反発がある(Wikipediaの英語版)けれど、結局、政治は費用便益分析なんかにかまいやしないという印象しか受けない。一度、政治の俎上に乗ると、費用や便益、リスクの議論は周辺化されて、何が何でも対処しなければならないというヒステリックな状況が生じてしまうのは、環境ホルモンやBSEのときにも見られたことだ。
今年は運良く、Lomborgと同郷、デンマークの売れっ子国際政治学者であるOle Wæver教授の講演(9/30、@本郷、東京大学)と、スターン・レビューをまとめて今の温暖化対策の流れを後押ししているLord Sternの講演(10/19、@青山、国連大学)で、それぞれLomborgの意見についてどう思うか質問する機会があった。
Wæver教授は、
- Lomborgの主張はデンマークで大きな支持を得ている。
- 自分も地球温暖化は”securitize”(安全保障化)され過ぎている面があると思う。
- しかし、費用便益分析だけで政策が決まることはない。それを分かっていないLomborgは”a bad political scientist” だ。
と述べていた。
Lord Sternは、
- Lomborgは費用便益分析について「学部レベルの過ち」を犯している。費用便益分析は互いに影響し合わない政策の代替案を比較するものであり、地球温暖化のように広範に影響が及ぶ問題を、その影響が及ぶ細かい問題と比較するのは間違っている。
- コペンハーゲン・コンセンサスは割引率が高すぎる。遠い将来の世代の生命価値はそもそも一切割り引くべきではない。
と述べていた。
費用便益分析は政策決定のベースの一つに過ぎないし、地球を守らないといけないという倫理的な判断の方が重要だというのも分からないではないけれど、莫大な費用がかかる問題だからこそ費用便益分析を重視するべきだ思う。
「学部レベルの間違い」については、Lomborgの著書に反論があった気がするがいまいち覚えていないので、また後日触れるつもり。割引率は、0.3%くらいがいいのか、それとも双曲割引率を採用すればいいのか。一切割り引かないというのは、考えにくいのだけれど、どうなんだろう。初めに結論ありきで、割引率をいじることは可能だし。
<まとまりがないので、つづく>
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